【Leaf Academy補足資料】品種の夜明け-Ep.6品種はうま味から香りに変化

前回のおさらい

前回のエピソード5では、品種改良が日本のお茶生産に与えた影響について詳しくお話を伺いました。今回は新しい時代の変革と共に、品種がどのように変わっていくのかについて伺います。


ゲスト:

中村 順行 先生 | Yoriyuki Nakamura

静岡県立大学食品栄養環境科学研究院・食品栄養科学部特任教授、食品栄養環境科学研究院付属茶学総合研究センター長


聞き手:

大澤 一貴 | Kazuki Osawa

MYE blend tea atelier代表。江戸時代から続くお茶屋「大佐和老舗」の8代目として生を受け、7代目大澤克己のもとで茶業を学ぶ。合組茶葉専門のブランドMYE blend tea atelierを立ち上げ、茶の品種の奥深さを知る。


※このブログの内容は、以下のポッドキャストエピソードと連動しています。ぜひ合わせてお聞きください。


①品種多様化時代への移行

中村先生
中村先生

前回はですね、「やぶきた」は素晴らしい品種であり一辺倒化した。偏重化しすぎたがゆえに業界自身も硬直化してしまったというお話をさせていただいたんですが、そんな硬直化した業界の中にも平成という時代を迎え、この需要の停滞を打開しようとギャバロン茶とか低カフェイン茶、さらには缶ドリンク、ペットボトルという風な多種多様なお茶の商品が生まれてくるわけですね。

急須だけじゃなくなってきましたもんね。この時代になってくると。

大澤
大澤
中村先生
中村先生

お茶も非常に多様化してくるわけです。
そして、品種もこの多様化に立ち向かわなければいけないということで、これまで「やぶきた」を中心とした品種群っていうんでしょうか?
もう旨味を主体とした品種からですね、香りに特化したようなものが平成の時代から生まれ始めてくるんですね。

それはあれですか?そのどんどん食生活が変わっていったとか、そういったところにも影響されるんですか?

大澤
大澤
中村先生
中村先生

多いに影響していると思いますよね。
食生活も変わるし、さらには消費者の皆様方が感じるおいしさ、味覚もですね、どんどん変化してきたことも大きな要因になっていると思います。

その前までは、やっぱり旨味とか、その「やぶきた」であれば、やっぱり渋みもあって、その調和の取れた美味しさっていうのがやっぱりあったと思うんですけども、そういうのが徐々に現代になって変わってきたっていうことですかね。

大澤
大澤

②香り重視へのシフト

中村先生
中村先生

そうですね。
以前はですね、第5話でお話ししたように「やぶきた」から少しでも変わったような香りとか味のものは、なかなか皆さんが認知してくれなかったところがあるんです。
ちなみに私が平成10年に「香駿」という品種を育成したんですが、この時代ぐらいからですね。
香りに特化したようなものも皆さん認知し始めてくれたのが…
ちなみに「香駿」を育成した時には、こんな変わった香りのやつはだめだよということで、随分酷評を受けたというかですね。叩かれたんですが、いやいや、これはもう「やぶきた」とは全く異なるもので、消費者がこのお茶を見て飲んだりした時に、今までと違うものだぞという認識をしてくれるぐらい違うものだから、これはこれで生きる道が出てくるかもしれないぞというようなことで、皆様を説得したわけなんですよね。
だから最初から私は「香駿」自身が大量にたくさんの面積に植えられるとは考えていないんですね。自営自製自販のような方が自分のお店の特徴を出すために「香駿」を少し作って、ちょっと変わったものがあるぞということで、販売してくれるようなものとして導入してくれればいいなというようなことを考えてリリースしてきたものなんですね。

香駿(こうしゅん)
  • 平成10年(1998)に中村先生をはじめ静岡県茶業研究センターの方々が育成された品種
  • 普及面積は12ha
  • 普通煎茶でありながらジャスミンやミントなどのハーブ系の香り。萎凋や発酵でさらに高まる。
  • 摘採時期が「やぶきた」と同時期の中生種。
  • 大量生産を目指す大型製茶共同工場向きの品種ではない

それこそ、あの「やぶきた」にとって変わろうみたいな野心みたいなのは?

大澤
大澤
中村先生
中村先生

もう全くなかったんです。
ただ、時代的にですね、もう「やぶきた」の時代から次の時代へのきっかけ作りをしたいというようなことを考えて逆にですね、これはもう「やぶきた」とは全く違う差別ができる、消費者が誰でも分かるものなんだというようなことでPRしたわけなんですね。

多様性の中で「やぶきた」がダメとかじゃなくて、共存していく選択肢を設けるという意味での新しいアプローチが「香駿」になったということなんですね。

大澤
大澤
中村先生
中村先生

ニッチな世界に踏み込もうというようなものですね。
そうしたところですね、その後平成15年には「はるみどり」が、そして平成17年には「そうふう」、平成18年には「ゆめわかば」「ゆめかおり」そして「さえあかり」、「なごみゆたか」、さらに「おくはるか」「しずかおり」で、令和になってからも「きよか」とか「ゆめすみか」とかが出てくるわけです。
このように「やぶきた」とは全く違った香りに特化したような品種が続々と育成されるようになってきたわけですね。
まさしくその先陣を切ったものとして「香駿」が評価されているというようなことになるわけですね。
一言で言うならば、煎茶用の品種も、もう旨味重視の時代から香りと豊かな香味を持った品種にシフトしていく時代に入ったんだという風に考えているわけなんですね。
そんな中で、その最たるものは消費者の嗜好から見てもですね、最近よく私言うんですけど、これは品種、おいしいかおいしくないかってよく評価されますよね。その美味しさっていう風な基準がですね、昔は昔はって言ったらおかしいんですけども、煎茶には旨味が強いほどイコール美味しいと評価されていたんですね。
本来、煎茶は爽やかな味と香り、後味のすっきりした感じでいいはずなんですが。玉露は当然旨味ですよ。玉露のような旨味のある煎茶がこれが美味しいんだという風にどんどん変わっていった時代もあったんですけども、いやいや、そうじゃないんだと。今の若い子たちは特にそうなんですけども、美味しいっていう感覚が旨味の強さだけではないものに変わってきてるんじゃないかという風に思っているんですね。

旨味とか茶葉の甘みとかそういうようなものが昔は多かったけども、今はどっちかというと、すみれとかなんかそういう花っぽいような匂いや香ばしい匂いとかですね。香りも重要な要因に切り替わっていってるのかなという印象を受けますね。

大澤
大澤
中村先生
中村先生

香りが随分重要視されてきているというようなこともあるんですが。
ちなみに美味しさっていうのはね、どういう風なものを美味しいっていうかっていうと大まかに分類してみますと、一つは生理的な欲求を満たしたときに美味しいっていう風な感覚を私たちは得るんですよ。
ものすごく暑い夏にですね。冷たいものを飲んだり食べたりすると美味しいって感じるでしょ?それは暑い時には冷たいものが生理的な欲求なんですね。
それがフィットしたときに美味しいって感じるんです。別に旨味とか香りでも何でもないんですよ。だから生理的な欲求に合ったものが重要です。それが一つありますね。

中村先生
中村先生

二つ目はですね、よく静岡の人達に聞くんですが、納豆美味しいって思う人?って言うと、大体静岡の人ってね。8割美味しい、2割があまり美味しいって思わない人がいるんですよ。
その2割の人をちょっと聞いてみると、関西系の方とか食べたことがない。あの匂いが嫌だって言うんですね。皆さんは納豆大好きでしょ。多分それはなぜかというと、小さい頃からあの匂いとねばねばにもう馴染んじゃってるからなんですね。苦手意識がない。あれ、食べたことない人はすぐに美味しいって言うとは思えないんですよ。
だからいわゆるその地域や風土の中で培ってきた味覚。そこにフィットしたものを美味しいって感じるんですよ。
だからほうじ茶とか飲んでる方、いっぱいいますよね。昔からほうじ茶飲んでる人はほうじ茶が美味しいって言うんですよ。ところが静岡の人はほうじ茶をあまり飲まないんですよ。
むしろ煎茶を飲むんですよね。文化的にほうじ茶よりも煎茶の方が美味しいっていうんですよ。
ところが、東京の方とか関西の方、ほうじ茶飲むでしょ。そしたらほうじ茶の方が美味しいというのがまさしく、昔から自分たちに慣れ親しんできた味としてのおいしさなんです。お母さんの作る味噌汁の味っていう言葉は昔よく言いましたけど、今の子たちはどうかわかりませんけども。まさしく母親の味が一番美味しいという風なおいしさですね。

中村先生
中村先生

三つ目がですね。
これが現代流なんですけど、情報がリードする美味しさ、これがあるんですよ。
皆さん、SNSであそこのお店のケーキが美味しいぜっていう風な情報バーって流れるでしょ。そうすると食べてもいないのに、そこのケーキを見るだけで美味しいって感じるようになるわけですね。刷り込みですね。
現代流の美味しさなんですよ。だからお茶屋さん、うまくSNSされて、俺のところのお茶は美味しいぜっていうのを上手に投げてあげれば、飲まないくせに買わないくせに美味しいっていう刷り込みができるわけですよね。
これが情報によるおいしさなんですよ。もうまさしく現代の情報がリードするおいしさなんですよね。
そして四つ目としてはですね、病みつきになる美味しさってよく言われるものがあるんです。
餃子でもそうですし、焼肉でもそうですしね、ラード油ですね。
甘い。あのラードがほどよく入っているものはですね。動物みんな大好きなんですね。よだれを垂らすおいしさっていうんでしょうか。

動物性の脂肪ですからね。

大澤
大澤
中村先生
中村先生

あれはですね、猫でも犬でもネズミでもそうですけど、ペロペロと舐めるんですね。人間もそうなんですよ。餃子なんかでも入ってるでしょ。だから美味しいんですよ。
私みたいに歳を取ってくるとあのラードがもたれるようになるんですね。
ラーメンもそうでしょ?ラードかなんか効いてるやつのほうがおいしい、うまみが強いって言うでしょ。くどいっていうんでしょうか?わたしに言わせると。笑 でもそれが一つのおいしさなんですよ。

先生はくどいっていう感じになるっていうことなんですか?あれは美味しそうに感じるけども、食べたらもたれちゃうんですか?

大澤
大澤
中村先生
中村先生

私のような歳になってきますとね。胃もたれしちゃうんですよね。あれだけの美味しさのものは。匂いは美味しいって感じますよ。よだれがたれるほど美味しそうに見えますよ。だけど、食べてみると、後で食べ過ぎた〜もたれたみたいになるんですよ。
という風なことで、おいしさというのも、昔は煎茶というのは旨味が強いものが美味しいというようなことで、我々は教わってきたし慣れ親しんできたというところから少しずつ評価基準も変わってきていると感じています。
これは本当、これからの茶業界や品種、お茶屋さんたちがどうやって消費者を取り込んでいこうかという時に考えていただきたいことにもなるんですが、そんな中で先ほど少ししゃべってるんですね。
その美味しさの基準の中に旨味イコールおいしさだけではなくって香りとかあるいは情報によるおいしさ、さらにはですね、生理的な欲求を満たすようなものと思うんですね。
非常に今の若い子たちは美味しいというようなことを感じて飲んでくださったり食べますので、是非そんなところにですね、チャレンジしていただきたいなと思っております。

そういったどちらかというと国が主体で、生産力を上げるために増えてきたものが、だんだんと市場のニーズに合わせて品種を変えていこうっていう流れになってきているということですね。

大澤
大澤
中村先生
中村先生

かっこいい言葉で言うと、マーケティングの発想というんでしょうか。
そういう風なところが必要になってきたというようなことになろうかと思いますね。
ちなみに、さっきのお茶なんか一言で言うとですね、今の若い子たちは完全にライト思考ですよね。ちょっと軽めの爽やかで、香りもこれまで以上に重要な要因になってきているということは非常に強く感じますよね。

なんか昔の深蒸しの良さのコクとか、そういう深みっていうのが、若い人にとっては、ちょっと苦手意識を持ってたりとか。
極端に苦いって感じやすいっていうところからすると、今のはライト思考っていう形になってくるのかもしれないですね。

大澤
大澤
中村先生
中村先生

そうですよね。
もう本当にだって私は信じ難いんですけど、水が美味しいっていうでしょ?あの水に美味しさを感じているんですよね。すごいですよ。
それだけ味覚が我々と違ってるというんでしょうか。そういうふうな時代に入ってきてるんだなという風に思うんですよね。

水も選んで買う時代ですもんね。

大澤
大澤
中村先生
中村先生

違いがわかるんですよね。若い人たちは。
そんな中でお茶の香りについても容認されてき始めていますよね。
多種多様な香りをお茶品種は持ってるわけですが、今まではあまりピックアップされなかったんですけども、これから大いにピックアップしていただけたらと思います。品種でなくてもほうじ茶が一時ブームになりましたよね。ほうじ茶の香り、爽やかな味とあの香りですよね。そういうところにも美味しさを今の消費者は感じてますので、ぜひそんなことも頭に描きながら品種も選び、なおかつ商品もですね、マーケティングの発想でもって作っていただけると、新しいお茶が商品化されてくるんじゃないかと感じているところなんですよね。


③時代とともに変わる品種の特性

品種で言うと、前のお話でやっぱり一つの品種を作るのに30年ぐらいかかるっていうお話があったと思うんですけども、先生が「香駿」を作る時に、次の時代にこの匂いが合うっていうのは、その30年前から決めてできるものなんですか。

大澤
大澤
中村先生
中村先生

いや、それは難しいですね。
特に現代のような時代5年先を読むのも難しいわけですね。ましてや10年先読むのはもっと難しい。30年先?分からないです。どうなっているか。
その時の消費者がですね、どのような思考を持っているかっていうのは、第4話でしたか、品種っていうのは時代の要請で変わっていくっていうところをお話したと思うんですが、30年先の時代がどうなっているか。ま、おそらくSDGsのような思想がはびこり、なおかつ情報社会の中でストレスを強く感じる社会の様相を呈してきているんだろうなということは感じるんですが、じゃあ食生活がどのようになっていて、そこに飲料としてのお茶がどのようなものが望まれているかを予想するのは難しい。

中村先生
中村先生

でも育種はやはりどうしても20年とかかかりますので、なんとか育成するときに私なんかはどうするかというとですね、まず現代の遺伝資源っていうのがあるわけです。
遺伝資源っていうのは、お茶のいろんな遺伝子を持っているものをプールしておくっていうんでしょうか。保存しているものがあるんですけども、その中から例えば香りの豊かなものと味の豊かなものを掛け合わせた子供を作っていくんですよね。
そうすると、その子供の中には香りが豊かな子供もあるし、味の豊かな子供もあるし、中間のものが出てくるという風なことで、特徴あるものだけを残しておくんです。
例えば、300個体子供を作ったら、味のいいもの100個体、中間のもの100個体、香りのいいもの100個体となった場合、100個全部残す必要がないもんですから、その中で代表的なものを10個体ずつ残して30個体ぐらい取っとくんですね。
そうしといて、それをひそかに財産として隠し持っとくわけですね。
同じようにじゃあウーロン茶のような香りも受けそうだなと思ったら、ウーロン茶の品種と、もう一つは紅茶のような品種をかけまして、子供をやっぱり少し作って持っておくという風なことでですね。

じゃあ秘蔵っ子みたいなのがたくさんいるわけですね。

大澤
大澤
中村先生
中村先生

そして、その秘蔵っ子の中からですね、ある特性を持ったもの、あ、香りが今、時代が来てるぞという時には香りに特化したようなものを少しピックアップしてきながら今の時代にあったような香りをより詳細に調査していくんですね。
ちなみに「そうふう」とかあるいは「ふじかおり」みたいなのありますね。あれ、同じ香りするでしょ?似てますでしょ。あれの親は印雑131ってやつなんですよ。
で、印雑131は品種にはなれなかったんだけども、その香りを持ってるがゆえに、その香りを子供に付けたいということで、交雑後の子供の中から「そうふう」が生まれたり、あるいは「ふじかおり」が生まれたりしているんです。
ところが、印雑131が育成された時代には抹香くさいとか。お線香の香りですね。こんな強い香りのものは受けないとかって言って、全然その時代は評価されていないんですよ。
だけど、ある先人たちはいや、これだけ強い香りはいつかものになる時があるかもしれないぞというようなことで、秘蔵っ子のようにとっといたんですね。
それがある特定の時期に来た時に、ちょうど「ふじかおり」の時には釜炒り茶というものが流行し始めてまして、釜炒りはやはり香りが非常に重要視されますので、「ふじかおり」は釜炒りにすればいいんじゃないかっていうことで、品種に仕立ててあげてくるんですね。

印雑131
  • 大正11年(1922) 現茶業研究センターの丸尾文雄により、インドのマニプールから種子を導入、播種した「マニプリ15」の実生(みしょう:種子から発芽したばかりの植物)から選抜
  • 強烈なジャスミンを思い起こすような香り。導入した生産者より「蘭龍」と名付けられる。
  • 強い香味が当時の万人に受けなかった。極早生種で耐寒性に弱く、地域適応性が狭かったため栽培面積が増えなかった。
  • 交配親として「そうふう」「ふじかおり」の特徴ある花香に大きく貢献

釜炒りに特化した品種として作られたということなんですか?

大澤
大澤
中村先生
中村先生

それは意識して作られただけで実際には蒸し製で作ってるんですよ。
茶の育種期間は長く、なかなか先を読むことは難しいため、素材をいかにたくさん持ってるかということが育種の大きな力になれるかならないかになるんですね。

じゃあ、まだ世に出ていない。
本当にまだこれからの時代の変化とともに、世に出てくる品種の子供たちがたくさんいらっしゃると。

大澤
大澤
中村先生
中村先生

そういうのをまた持っていないとですね。
なかなかこう育種、新品種としてその時代にフィットしたものを提案するっていうのはなかなか難しいんだろうと思っているんですね。
ちなみにお米だってそうですよね。あの「コシヒカリ」というのも、ずいぶん前に育成されたんですけども。あの旨味と倒伏性っていうんですか?稲が倒れちゃうもんですからね。
なかなか世に出なかったんですよね。ところが、時代が良質米、旨味の強いお米を好むようになって「コシヒカリ」が世に出てくるんですよね。だから育種してからずいぶんデビューするまで時間がかかってるんですよ。もう育種っていうのは結構そういうところもあるんですよね。
やはり時代のニーズとヒットしてこないとデビューがなかなかできないという風なところもあるし、逆に品種によって時代を作るっていうこともできるという。

流行を先に作って流行を呼び寄せるっていう感じですかね。

大澤
大澤
中村先生
中村先生

そうなんです。
耐寒性の品種なんて、まさしくお米が北海道まで行って、今お米の一大産地でしょう。美味しいお米いっぱいありますよね。
まさしく耐寒性を持った品種を作ることによって、北海道に稲作技術を作っていくんですよ。
お茶で言うと「やぶきた」は在来種に比べて葉っぱの大きさが倍大きいでしょ。芽立ちも多いでしょ?最初の頃はしかも「やぶきた」はこう立つ、直立型の品種なんですね。上に横に広がるんじゃなくって。そうしますと、在来種は横に広がってあまり伸びないんですけど「やぶきた」植えた人ってのは、最初は非常に苦労するんですよ。栽培の仕方に。それで「やぶきた」の真ん中にですね。竹の棒を置いたりしながら横に広げようとしたりですね。
あんなでっかい葉っぱは手では揉めないわけですよ。在来種みたいなちっちゃな葉っぱを揉んできた人が、こんなでっかい葉っぱを揉むのができないわけですよ。
だけど、機械によって力を加えることによって、ちっちゃな葉っぱだと粉々になるけど「やぶきた」でも揉めるような改良がどんどんされてくるんですよ。
まさしく「やぶきた」ための栽培方法とか加工方法が確立してくるんですね。これが品種が技術を変革していく事例なんですね。
ただ、残念ながら「やぶきた」のための製造法、あるいは栽培法がですね、「やぶきた」一辺倒になりすぎちゃって。それが普通だと思ってるから、他の品種を同じように栽培してもうまくいかないとかっていうことにもなっちゃうんですよね。

「やぶきた」かそれ以外かになっちゃってますもんね。

大澤
大澤
中村先生
中村先生

そう。だから、その辺のことも考えながらですね。
品種の普及なんかもしていかないといけないんだろうなと。

品種改良されることによって、今北限ってある程度決まってると思うんですけども。それがだんだんと、極端に言えば、北海道でも育てられるようなお茶っていうのはできたりしていくもんなんですかね。

大澤
大澤
中村先生
中村先生

北海道は極端ですけど無理でしょうね笑
ちなみにですね、耐寒性真冬の寒さに対してはお茶はマイナス13度15度ぐらいまで耐えることができるんですよ。
ところが新芽ですね。やはりマイナス1.5度くらいで凍ってしまうんですよ。
それをなかなかクリアすることができなくて寒いところに持ち込むのが大変なんですね。
でも、現在でもというか、江戸時代にも種子で植えた時には秋田県の檜山茶とか津軽にもお茶の生産地がありましたし、岩手県にもですね、今でも三陸はありますし、宮城県にもありますよね。
で、冬の寒さっていうか根っこが非常に寒さに弱いもんですから。地表面が寒いと凍るでしょ。
5cmとか10cmそこから下に根っこ入っちゃえば10cm、20cm入ってしまえば凍ることはありませんから。多分、お茶は生存できるんですね。
で、秋田県あたりは今まで雪が多かったから雪の下で冬を越しますので、茶樹のある部分の温度がそんなに下がらなかったということで、檜山地方ではお茶の産地も現在でも残っているわけなんですよね。
そんなことを考えると、やはり北限は、お茶の木を作ろうと思うと函館ぐらいまではできるのかなと。
温暖化ですから、少しは北上していくのかなという風なことは思いますけど。それ以上北へいくっていうのはなかなか難しいかもしれない。

商業的にやるってなってくると、ちょっと難しいってことですね。

大澤
大澤
中村先生
中村先生

それはまた別問題です。

「やぶきた」はどうでしょう。
今、「やぶきた」がガリバー化してこれだけ多くなってきましたけど、これからの時代、変化とともにいろんな品種ができて、その割合的にはもっと三割、二割とかそれで落ち着いてくるんでしょうか。

大澤
大澤
中村先生
中村先生

減ると思いますよ。
やっぱりでも全くなくなるってことはありえないと思いますけど、確実に減って今、静岡県ですと植えられる品種は「つゆひかり」の方がずっと多いんです。「やぶきた」よりは。「つゆひかり」を植えられたり、他の品種、碾茶に向いたような品種を植えられたり、有機栽培に向くような品種が作られたりするようにはなってくると思います。
多様性に富んだ品種が栽培されるようになっている。
ですので、品種にとっては非常に今光が当てられてきている時代になっているんですね。

【補足】近年の新品種

年号主なできごと
1998年中村先生が「香駿」を育成する
2003年「はるみどり」が育成される
2005年「そうふう」が育成される
2006年「ゆめわかば」「ゆめかおり」「さえあかり」「なごみゆたか」が育成される
2018年「きよか」が育成される
2023年「ゆめすみか」が品種登録される

お茶の木が育つまでには長い時間がかかるため、どのように先の時代を読んで育種されるかというのは、「香駿」の育成者である中村先生にしか伺うことのできない貴重なエピソードでした。全6回に渡り、非常に興味深いお話をお聞かせいただいた中村先生、ありがとうございました。


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