【Leaf Academy補足資料】茶品種の開発について

私たちMYE blend tea atelierが販売している茶葉は全て、合組(ごうぐみ)された茶葉です。ラベルをよく見ると、混ぜ合わせられている品種の名前も見ることができます。

緑茶と一言に言っても、お米や他の農産物と同じようにたくさんの品種があります。私たちは日々、たくさんの品種を拝見し、それぞれの特性を掴みながらお茶作りをしていますが、その品種が誰によって開発され、どのように生まれるのかについては詳しくありませんでした。

今回はそんな茶品種の開発について、実際に開発をされている方にお話を伺いました。

MYE代表の大澤がインタビュアーとなり、静岡県農林技術研究所 茶業研究センター茶生産技術科 主任研究員の川木純平さんにご説明いただきました。このブログでは、2人の会話を抜粋しながら、補足資料と合わせて説明していきます。

※このブログの内容は、以下のポッドキャストエピソードと連動しています。ぜひ合わせてお聞きください。


①茶葉には品種がある

まずは早速質問なんですけども、緑茶の茶葉の品種ってこの世の中に全部で何種類ぐらいあるんですか?

大澤
大澤
川木さん
川木さん

日本で出てる品種だけだと大体約130ぐらい品種数としてはあります。近年ちょこちょこ出てるので、詳しい数は把握していないですけれども、それでもおおよそ130くらいです。

【品種についての補足】
  • 130種類あるが、すべてがやぶきたのように全国的にシェアを得ているものばかりではない
  • 個人でも品種の育成と品種登録を行うことはできる
  • 古い品種は新しい品種に入れ替わっている
  • 川木さんの思う「いい品種」とは、(栽培しやすさや病気への強さ、多収性のバランスをクリアしながらも)最終的には味と香りがいいもの

MYEでは常時20種類前後の品種を取り揃えてお茶作りを行っており、新しい品種を見つけては手に入れて試飲を行ったりと、品種に対しての感度を高く保とうと意識していました。しかし130種類もの種類があったとは初耳で驚きました。まだまだ見たことも聞いたこともない品種がたくさんありそうでわくわくしてきます。


②品種はどうやって作られるのか

提供:静岡県農林技術研究所 茶業研究センター
  • 育種目標…作りたい品種に合わせた花粉親と種子親を決める。
  • 交配…お茶の花を使って手作業で受粉させる。 ←一番大変な工程
  • 採種・播種(種まき)…種子を採種し、ポットに播種し、種子苗を養生する。
  • 個体選抜…良い種子苗を選び、畑に定植する。小規模で栽培して生育を確認し、お茶を揉んで品質をみて良いものを選ぶ。
  • 栄養系比較試験…挿木で苗を増やす。増やしにくいものは省く。その後、畑に定植し、大きめの規模で製茶して試験する。
  • 奨励品種選定試験…平坦地だけでなく、川根のような中山間地でも育つかどうかを試験する。

ざっとお話いただいただけでもかなり時間がかかりそうなイメージがあるんですけども、大体最初の目標の設定からこの奨励品種の誕生までこれはだいたいどれぐらいの期間を要するものなんですか?

大澤
大澤
川木さん
川木さん

だいたい約30年かかります。

【品種育成の手順についての補足】
  • 30年かかるのは、茶の木を大きくするのに4〜5年かかり、そのサイクルを3回程度繰り返す必要があるため
  • 30年後のトレンドを見越して育種目標を立てる必要があり、そこが育種をやっている人のセンスが問われるところ
  • 5000~6000個の花を一つ一つくっつけて交配を行うのがとにかく大変
  • 5年に2品種を目標に作っている
  • 各試験の際には、研究用に作られた小さな製茶機械を使用する(一般的な製茶機械…35kg〜用|センターで使う小型機械…20gや50g用など)

茶業研究センターでは今年、「90-2-213」「95-7-35」という2種類の新品種の名前を募集していました。お話を伺うと、これらの名前の先頭の数字「90」と「95」は、開発が始まった年を表すそうです。まさに2つの品種ともに30年前後の年数がかかって完成した品種ということがわかります。一杯のお茶に歴史あり。130の品種一つ一つがたくさんの年月と多くの人の努力の上にできたのだということを実感しました。


③品種はどのように流通するのか

開発された茶葉はどのように流通まで至るんでしょうか。

大澤
大澤
川木さん
川木さん

品種登録出願をして出願公表、仮品種登録期間になったら、苗木の販売をしてくれる人と売っていいですよという契約を結びます。そうすると苗木業者がその苗を作ってくれて、それを農家さんが買って植えます。
お茶は大きくなるのに植えてから4~5年はかかっちゃうもんですから、そこから売られる、市場に出るっていうところまではトータルでも5年ぐらいはかかっちゃうのかなっていうのはありますね。

【品種流通についての補足】
  • 5年程度かかって市場に出た後、本格的にたくさん栽培されて量が増えてくるまでを考えると、トータルで10年程度はかかることになる
  • 1000平米に2000本ほど植えられている木を抜いて新たに植え直すなど、新品種に植え替えるのは大変
  • お茶を買ってくれる人が品種を知ったり、興味を持ったりしてくれると農家さんも植えやすい

②でも触れたように、たくさんの年月とたくさんの労力をかけて開発された品種が広まるまでにさらに年月がかかるということは、恥ずかしながら初めて知ったことでした。

私たちは茶葉を合組してお茶作りを行っているため、面白い品種が出てくれば出てくるほど表現の幅が広がります。たくさんの個性のある品種が栽培されるようになり、お茶を飲む人の楽しみがもっと増えれば、これほど嬉しいことはありません。そのためにも、品種それぞれが持つ特性を活かしながら、これからもお茶作りを行っていきたいと思います。

今回お話を伺ってみて、改めてお茶の奥深さ、品種の奥深さを感じることができました。川木さんには今後ももっと深い話を伺えたらと思っています。

みなさんもお茶を飲むときには品種に注目して味わってみてください。


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